//君色主義//




痛い程の沈黙に包まれた室内


ゆやはその部屋の前で、まるで親に叱られた子供の様に不安げに入口から顔を覗かせて居る



(どうしよう‥)



―事の起こりは半時前






「まったく、みんな勝手なんだから!」

怒りを露にした侭ゆやは一人色町の中を歩いて居た
遊郭に行く事は何時もの事なので呆れ顔で男共を見送ったが問題は自分の懐だ

無いと気が付いて追い掛けたが既に何処かへ入ってしまった後
又財布が軽くなった事に深い溜め息を吐き宿へ戻るしかなかった

「誰のお金で旅してると思ってるのかしら‥そんなに女を抱きたかったら自分等で稼ぎなさいよね!」


「‥でも俺が抱きたいのはゆやだし‥」

「っ!」

「いっぱい稼いだら抱かせてくれるの?」

「ほたっ!ほたるさん!」

聞き慣れた男の声が反ってきた上、赤面してしまうような事を耳元で囁かれゆやは心臓が飛び出る程驚いた
振り返ればいつの間にか背後からほたるに抱き付かれていた


「ゆ、遊郭に行ったんじゃないんですか?」

「ううん、お風呂」


質問に答えつつ鋭い視線で先程からゆやを舐め回す様に見ていた男達を睨み付けた
ほたるがゆやを見つけた時、数人の下卑た男達がゆやを遊女と勘違いして言い寄ろうとしていた。
其れが気に食わなくて自分のだと誇示する為に抱き付いたのだ




突き刺さる様な殺気に男共は顔を青ざめて逃げて行った

夜の色町にこんな眼を惹く髪と容姿をした少女が歩いていたらどうなるか、ゆやは全然わかっていないのだ


全く警戒心の無い事にほたるは多少腹を立てた


「帰ろ」

強引にゆやの手を掴むとその侭宿へと歩き出す

「わっ!ま、待って下さい」

華奢な力が抵抗出来る筈も無くバランスを崩しながらずるずると引っぱられて行った



(怒って‥る?)


無言で先を進むほたるの後ろ姿にゆやは不安げに眉を寄せた








宿に着いた後もほたるは口を聞いてくれなかった
明らかに不機嫌で怒っている。‥しかしゆやにはその理由も心当たりも全く思い付か無かった



−そして今に至る



「ほたるさん」

未だ背を向けた侭顔を向けようとしないほたるに怖々話しかけてみた

「あの‥怒って‥ますか‥?」

「…」


そっと横目で俯いた侭佇む少女を見やる



(そろそろ許そうかな)

実の所機嫌はもうだいぶ納まっていた
だがゆやの困った声と仕草が可愛くてつい苛めたくなってしまう
何時もの気丈な彼女も好きだが困った顔もまた滅多に見られ無い為新鮮だった

(まあ…十分堪能できたしいっか)

悪戯をする子供の様な笑みを浮かべるとくるりと振り返りゆやに手招きする


「許したげるからおいで。」

「え‥」

こいこいと手招きされゆやは戸惑いながらも傍まで歩みよった


「座って」

「は、はい!」

きちっと正座をしてほたるに向き直る


「ごめんなさい…あの、でも‥理由が解らなくて…」

「(やっぱり)‥まぁ反省したんなら良いよ。…でもちゃんと償いはしてね」


「…へ?」



間の抜けた声を上げ首を傾げた瞬間視界が反転する

背中に伝わる堅い感触が畳だと気が付くのにそう時間は掛からなかった

「えっ‥!ほたっ」

「何してくれる?」

首を捻りながら楽しそうにゆやを眺めている。
組み敷かれた当人は真っ赤になった侭何も言えず、ぱくぱくと金魚の様に唇を開け閉めして居た





可愛い…




冗談で言ったつもりだったがこうも可愛らしく反応されて何もしないでいられる程ほたるは理性的な男ではなかった

「‥口付けて良い?」

「ふぇっ?!」

「それで許してアゲル」

「や、で、でも!!」

案の定首を勢いよく横に振って必死に拒む
じゃあ、とすかさず口を挟んだ…

「口以外なら良い?」

「えっ‥?そ、それで‥良いんです‥か?」

おずおずと尋ねるとほたるは首を縦に振って大きく頷いた


(く、口以外って事はおでことかだよね‥)


やけにあっさりとしたほたるの行動に不信感を抱きつつ、恥ずかしさからゆやは素直に瞳を閉じる


「−ふ」

首筋に何やらくすぐったさを感じた。
思わず身をよじるが伸し掛かられている上両手首を掴まれている為動けない

「痛‥あっ」

最後に鈍い痛みを感じた所でゆやは恐る恐る瞼を上げた。既にほたるは顔を上げ満面気に口元を歪めている


「…ほたるさん?」

何が起こったのか解らずゆやは瞳を瞬いた侭固まってしまった

(終わった…のかな?)

首を擦りながら何だったんだろうと首を傾げた。‥さすが天然


(と、とにかく‥此れで良いんだよね)


ほっと胸を撫で下ろし起き上がろうとしたが…


「‥‥ほたるさん?」


ほたるが両手首を掴んだ侭放してくれない


「どうし…」

「…やっぱ我慢出来ないや。」

「えっ…!っや!ちょ、ほたるさっ…っあ」

ほたるの行動に漸く自分の状況が理解出来た…時には既に遅し



「今日一日反省してね。」

「〜っ!!」








其の晩ゆやは一晩かけてたっぷりと反省させられたらしい


そして二度と彼を怒らせてはいけないと、心に誓ったのだった






終

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反省…。

お待たせ致しました晴日様、年内までにはと言って居たのは何処の大馬鹿野郎だったでしょうか(汗)
いつもゆやたん至上主義なほたなのでたまにはほたののペ−スにゆやたん巻き込ませてみるのもなぁ〜と思い書きました。
結局ゆやたん至上主義なのは変わりませんが‥。

相互リンク有難う御座います!!!
今後もどうかこの役立たず目を宜しく御願いいたします。。


有難う御座います晴日さん!!!

なな何と献上した小説に晴日さんが挿絵を書いてくださいました−v
うわん!枯れたブツがみるみる潤って行きますv


  2005.1/4

改 2005.3/22




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