消えてしまう夢を見た //夢より冷たくて雪より暖かいモノ// 「―っ」 跳ね上がる様に布団から起き上がった ばくばくと五月蠅く鳴る鼓動を押さえ付けて辺りを見回す 障子越しに差し込む光が眩しく反射するだけで、何事も無い様に辺りはシンと静まり返っている 夢…? 一息ついてから冷静な頭で先程の夢を思い出そうとするが 夢と言うモノは起きると朧気になってしまうモノで、何故こんなにも自分は焦っていたのかどうしても思い出せない 唯、ぼんやりと起きる直前のあの影像だけが頭の中に粘り付いて取れない 君は笑顔でたっていて 抱き締めようとしたら空に消えて 幾ら掴もうとしても君は笑顔の侭、それを許してはくれなかった 「…っ」 最悪の寝覚めに苛立ちながらも独りで居る事に急に不安を覚えた 不快な気持ちの侭再び寝る気にもならず、そっと格子に手を掛ける 「‥あ」 ひたりと‥頬に掛かる柔らかな冷たさ ちらちらと降り積もる純白なそれに思わず息を飲んだ 「ゆき。」 てっきり昼間だとばかり思っていたあの光は降り止む事なく落ち続ける白銀に朝日が反射したものだった だからやけに静かだったのかと誰も居ない庭を見て納得する 「…?」 真っ白な世界に赤い雪が混じった気がする …。 気のせいかと思った 確かめるなんて面倒臭いだけだ …なのに何時の間にかその雪を追いかけていた ざくざくと雪を掻き分け、先程見えた場所へ向かう いつもならうざったくて溶かし尽くしてしまう雪も、今はそんな気になれなかった 「―っ」 …いた 真っ赤な朱塗りの傘をさす、小さな背中 雪の中に佇むその姿が、夢の中の少女の様にはかなげで今にも消えてしまいそうな錯覚に陥った 伸ばした手が行き場を失う事無くその存在を掴む 「っきゃ!」 掴まれた本人は驚いて振り返り、目の前の男を見つめた ほたるの眼が僅かに見開く 「…ゆや?」 「ほたる‥さん?」 夢で見た少女がいた 「どうしたんですか…こんな朝はや―っ」 衝動に駆られる侭、ほたるはゆやを腕の中へ引き寄せた 傘が舞いながら洗練された地へと投げ捨てられる 此れは夢じゃないハズだ あの時許されなかった少女の温もりをきつくきつく、抱き締め感じ取る 「ほたるさ‥苦し」 僅かにもがくも、ほたるは黙った侭話そうとしない。 変わりに息苦しく無い様、少しだけ腕の力を弱めた 「…た。」 「え?」 呟かれた言葉にゆやは耳を傾ける 「良かった…。夢、みたから。ゆやが‥消える夢」 恐怖感と言うモノなんて、今まで一度も感じた事が無かった けれどこの少女が消えてしまう瞬間、絶望感にさいなわれどうしようも無く怖かった 掴めて良かった ぎゅっと抱き締めその存在を確信する 此は夢じゃ無いんだ 「‥ほたるさん、顔‥上げて下さい」 雪とは違う、柔らかな感触が触れた 寒さで体温の消えたほたるの唇をゆやの唇が包みこむ 軽く重ねるだけの‥暖かな口付け 熱を持った吐息が凍った唇を溶かし出す 「ゆや…?」 「私は、此処にちゃんといますよ。」 あなたの傍に だって、あなたありきの私だもの… 顔を埋め静かに呟く どくどくと波打つ鼓動が布越しでも伝わって来た きっと頬は真っ赤に染まっているのだろう 「ゆや、こっち見て。」 「―っ…ん」 顔を上げた瞬間熱い口付けが降り注いだ 先刻よりも長く、甘い口付け ‥心配掛けてごめんね‥ 名残惜しそうに唇を放した後、ほたるは穏やかな顔で微笑んだ ゆやも嬉しそうに笑顔を返す 「寒く、ない…?」 「ううん。暖かい。もう少し‥この侭で良いですか…?」 甘えるて擦り寄って来る少女の願いに答える様に、そっと慈しむ様に包み混む 消えてしまわない様に 壊れてしまわないない様に 強く 優しく 降り行く粉雪に佇む二つの影は冬の始まりを告げる初霜に祝福され とてもとても幻想的に彩られていた FIN _____________________________________________________________ お待たせ致しました八重様、五月様。 リクエストのほたゆやです。。。。リク内容がほたゆや呑みだったので好き勝手書いてしまいました。 ほたるんにはゆやたんを超溺愛して欲しいので…。 相互リンク有難う御座います。 どうぞ之からも宜しく御願いいたします(ペコリ) 2004.11/11
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