「やっと見つけた。」 嬉々と弾んだ声が耳元をくすぐった 誰‥と聞かなくとも分かっている 浅い眠りに微睡んでいたほたるはその声にゆっくりと、夢から現実へと引き戻される 瞼を開けたら愛しい少女はきっと、はにかみながらこちらへ駆け寄って来るだろう ふと、ちょっとした悪儀心が浮かんで狸寝入りを決め込んでみた 風の様に軽やかな足音に耳を澄まして彼女が触れるのをじっと待つ 「…ほたるさん?」 思惑通り駆け足で近寄って来た彼女─ゆやは、ぴくりとも動かないほたるに不思議そうに首を傾げていた ワザとらしく寝息を立てて熟睡してるんだとアピールすれば、遠慮がちに顔を近付けて寝ちゃってるんですか?と一言 可愛い過ぎて抱締めたくなる けどまだ、我慢 狸寝入りに騙されて居るらしいゆやは、細い指先をほたるの肩に置いて軽く揺さぶりながら起こそうと試みる 「ほたるさーん…。授業始まっちゃいますよ−」 幾ら揺すられてもゆやの声とセットじゃ甘い子守歌だ‥何て言い過ぎでは無いと思う 寝る気は無かったほたるだが、ゆやの声を聞いて居るうちにだんだんと思考がぼやけて行った ただ、この侭寝てしまうと諦めたゆやがアキラだとか辰伶だとかを呼びに行ってしまうかもしれない 「あ。やっと起き─きゃぁっ」 安堵の息を吐いたのも束の間…ほたると眼が会った瞬間、肩に置いて居た腕をおもいきりひっぱられ、 バランスを崩したゆやはそのままほたるの広い胸板へと倒れこむ しばし呆然とするも、腰に回された腕の感触にはっと我に帰る 「─っ!!ほたっほたるさんっ何してるんですかっ!!」 「抱き枕。ゆやの声気持ち良いんだもん‥」 ‥声が半分夢の中だ 邪魔者を呼ばれない方法なんて簡単 愛しい彼女を捕えて逃げられ無い様にしてしまえば良い しかし彼の寝付きの良さと寝起きの悪さを知って居るだけにゆやの方は冷や汗が止まらない 必死でもがいて逃げ出そうとするが華奢で‥それでいてがっしりとした両腕は全く解け無い その間に彼の思考はどんどんぼやけて行き、ついに 「‥ほたるさん‥?」 恐る恐る耳を澄ませば、聞こえるのは規則的な呼吸だけ ゆやの抵抗虚しくほたるの思考は深い深い所へと沈んで行ってしまったようだ 彼にとっての幸運でゆやにとっての不運な事はここが校舎裏で木々が生い茂って居る為上の階からは見えなくて 加えて今は1時間目が始まる所だと言う事 つまり、お昼休みに誰かが来るにしても雨でも降らない限りあと4時間はこの状態が続くのだ ばくばくと五月蠅く響く鼓動を押さえゆやは耳まで赤くなりながら祈った。大雨が降る事を けど結局、お昼休みに屯ろしに来たアキラや灯に見つけられるまでその侭だったそうだが… ゆやの祈りが変に通じたかどうかは分からないが、 其の後校舎裏には血の雨がふったらしい ____________________________________________ あ〜此れは甘甘‥?何ですかね。。もっとねちっこく絡ませたかったけれど途中でネタがつきました。 ちなみに最初は辰伶もからませる予定だったのです。死 2005・8/22
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