いつも見ているから

だからちょっとした変化でも気になって仕方が無かった



- Collor-



「大丈夫?」

「へ?」


朝の挨拶をした途端、いきなり"大丈夫"と不可解な言葉を掛けられたゆやは目を点にして首を傾げた

「あ‥えと、ほたる‥さん?」

別に忙しそうな訳でも怪我を負っている訳でもない。それなのに目の前の男は唯大丈夫と繰り返し、じっとゆやを見つめていた
何と言って返せば良いのか解らず適当な言葉を探していると、ふいにほたるが手を伸ばした

ひたと冷たい感触がゆやの額に伝わる
朝の空気て冷やされた掌は思いの他冷たく気持ち良い


―気持ち良い?


「…やっぱ熱い」

自分の額にも掌を乗せ、その差を比べ確信した

「ゆや、熱ある」

「!」

心底驚いた。確かに熱っぽいとは思っていたが微熱程度。それ程支障をきたす程では無かった‥。だからほたるに会った時も、いつもと
変わらない表情で挨拶したつもりだったのだ


「きゃっ!」

突然腕を引かれゆやは慌てて体勢を直す
ほたるは構わずぐいぐいとゆやを引っ張り廊下を歩き出した

「ほた、ほたるさん?!」

「寝てなきゃ‥風邪ひいてるんでしょ」


当然の様に言い、ゆやを小部屋へと連れて行く

無表情なほたるとは打って変わり、ゆやの顔は熱以外の意味で何だか青ざめて行く

「ちょ、待って下さい!」

ほたる相手に力で止まれない事は解っていたため、変わりに張り裂けんばかりの声を張り上げ引き止めた。
必死な声に流石のほたるも足を止める


「どうしたの?」

「このくらいの微熱大丈夫です。それに、今日は次の村まで行かなくちゃ行けないから‥」

寝込んだりなんてしまったらこの町に止どまら無くてはならない上、皆に余計に心配を掛けてしまう


これ以上足手纏いになんてなりたく無かった


「お願いします。本当に大丈夫ですから。あと‥皆には黙ってて下さい。‥余計な迷惑掛けたくないから」

俯いた侭泣きそうな声で裾を握り締める姿が病人扱いして少女を傷付けてしまった様で酷く罪悪感を感じた


ほたるは掴んでいる腕の力を緩めた



「‥ホントに平気?」

「はい。心配してくれて有り難う御座います。」

嬉しさと感謝を込めた柔らかな笑みを浮かべる

「さ、皆を起こさなきゃ。じゃぁほたるさん、また朝御飯の時に。」



「―あ」

やはり多少元気は無かったが本人があれだけ平気だと言うのだから、きっと大丈夫だろうと思った
なのに去って行く姿を見た途端、説明の付かないとても嫌な予感を感じた―




  →後編




2004・11/26



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