//最悪最高の日// 


「ヤバ、もうこんな時間。」 

ぱたぱたと廊下に足音が響く。 

放課後独り教室に残りレポートを書いていたゆやはぽかぽかとした暖かな陽気についつい船を漕いでしまった
…そして今に至る。

春に入りかけと言ってもすでに時刻は8時をまわり、校舎の外は真っ暗な闇が広がっている 

「やだなー気味が悪い。」 

夜の校舎はなんとも無気味だ。昼間と違い辺りはしんと静まり返り自分の靴音が何重にも響いて廊下を駆けて行く 

嫌でも足が速まる。

三階から二階へ一気に階段を掛け降りようとした時、下から誰かが階段を駆け登る音がした。 

「見回りの警備員さんだ…良かったあ…」 


取敢えず人がいる事にほっと息をついたのも束の間… 

「―っきゃ」 

ガクッと身体が前に傾く。
ふっと気の抜けた拍子に階段を踏み外したのだ 

視点が宙を見た。 

その侭、叫び声を上げる暇も無く真っ逆様に落ちて行った。

ドサドサッと鈍い音と共に床に転げ落ちる。 

「…っう」 

辛うじて受け身はとったが身体中が痛くて身動きがとれない 


ついてない…。 

殺伐とした意識の中でそんな事を思った。 






「…ん…」 

ふっと意識を取り戻す 

重たい瞼を開け、まだぼんやりとした頭で状況を判断した。 


「…そうだ私、階段から落ちたんだ。」 

どうやらその侭気を失っていたらしい。 


じゃあ此処は階段の踊り場のはず。 

なのに何故か背中が暖かい…と言うか廊下特有の堅い感触がしない
だんだん意識もハッキリとして来た。


「お、気がついたか?」 

「!」 

いきなり声を掛けられ一気に頭が冴えた。
声のした方に視線をやれば、ゆやもよく知っている男―侍学園体育主任で校内一の熱血教師…遊庵。 

「先生っ!何で此処に。」 

「おいおい、驚きたいのはこっちだぜ。
階段ですげえ音がしたんで行って見りゃあお前が踊り場でぶっ倒れてんだからよ。」 

ああ…そっか、あの足音は先生だったんだ 


「あの…それで此処は?保健室‥ですか?」 

きょろきょろと首を振って辺りを見回す。 

保健室と言う場所は余り見慣れないものだが、何だかそれとは雰囲気が違う気がする 


「あんな辛気臭え所じゃねぇよ。此処は俺様のマンションだ。」 

「…へ。」 

予想もしていない言葉に一瞬頭がフリーズした。 


「しようがねえだろ、お前全然気が付かねぇんだから…、此の学園は10時以降は全てオートロックなんだよ。閉じ込められるだろ。」 

「10時…?」 

ふっと目の前の壁掛け時計に眼を向けた。短針は真上の一歩手前…。 


「ウソ…11時。」

どうやら三時間以上も気を失っていた様だ。 

「遅く迄すいません!帰りま…」 

がばっと勢いよく起き上がろうとした瞬間、いきなり遊庵の掌が顔面を掴み… 

「頭打ってんだろ。寝てろ。」 

その侭布団に押し戻された。

「いったぁ〜」 


「あんだけ派手に落ちて擦り傷、打ち身、ねんざで済んだだけで有り難いと思え。」 

「う゛…はい。」 

そう言って何となく自分の手首に巻かれた真っ白な包帯を眺めた
恐らく遊庵が巻いたものだろう。 


「…以外」 

ぽつりとゆやが呟いた。

「先生、絶対俺様な生活してると思った。」 

「何だよそれ…」 


「毎晩女の人連れ込んで、部屋なんてお酒の缶で散らかって、男としてはさいっ底な生活してると思ってた…。」 


(そこまで言うか…。) 

「あ、あとほたるさんが『ゆんゆんは狼だから近付いたら危険』だって…」 

…あの馬鹿弟子 


少しばかり眉間にシワを寄せたがあくまで冷静な素振りを見せる 


「でも何で狼なんだろ?まさか…飼ってるんですか。」 

「……。」

見当違いな考えに喜んでいいのか、鈍すぎる事に悲しんで良いのか…。
尚も考え込むゆやを複雑な顔で眺める。

(これじゃあ螢惑も苦労するな…) 


「…あんま深く考えねえ方が良いぞ。それよりどうする?今日は泊まってくか?」 


茶化す。 

しかし此の一言が遊庵にとんでも無い夜を引き起こす事になる。 


「…良いんですか?」 

「ああ別にかまわな……は?!」 

思いがけない言葉に遊庵は心底驚いた。 

「アパートの鍵が見つからなくて…。落ちた時落としたみたいなんです。」 


恥ずかしそうに布団から顔を覗かせる…、上目遣いで自分を見つめる姿に遊庵は直感的にヤバイと感じた。 

先生と生徒という事はハナッから関係無く、男としての問題。 

しかも相手がゆやなら尚更だ。

だが言ってしまったものは仕方が無い…。 

遊庵は理性の危機を感じつつ冷静に…、冷や汗を隠しながらあくまで冷静に言った。 



「…じゃあ泊まっていけ、明日(俺が正気の内に)送ってやるよ。」 



その言葉にゆやは嬉しそうに満面の笑みで“有り難う御座います”と返した。 




遊庵の苦悩と葛藤の夜が始まる。


−END

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別館CP投票ぶっちぎりの第一位に輝いたゆんゆや。しかも現代版(げふん
鬼畜は無しでゆやたんのお色気に理性がギリギリのゆんを思う存分書き殴ろうかと。
アッハッハッハ──困れ遊庵(喜)

アンケに遭の続きを読みたいと言って下さった方が居たのですが実は紅の王+ゆやを遭の続編に書いてました。
どちらがお好みでしょうか…?

変態vs腹黒。 

2004・5/5


ちなみにその続きもどきとほたるバ−ジョンも書きました。。

その後

ほたる版



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