//逢//



石で出来た冷たい床の感触と何処からか吹き込む風の音に意識を取り戻した

「―っ…此は…?」 

目の前に並ぶ格子にどうやら牢獄らしいと理解する。
ジャラりと鎖が音をたてた。


「痛い…」 

鈍い痛みが走る脚を押さえ込む。

すでに傷口は乾き血が脚に固りこびり着いていた。

「皆は大丈夫かな…」 

門の入口に突如現れた四人の男。余りの強さに恐怖さえ覚えた。 

「脚を切られた所までは覚えてるんだけどな…」

気が付けば此にいた。
取り敢えず死ななかっただけでも喜ぶべきだがそれも一時に過ぎない。 
いつ殺されてもおかしくない状況に自分はいるのだから。

見張りは居ない、銃もある、足枷はしてあるが壁に繋がって居る訳では無い。
如何に自分が舐められているかが解り不愉快に思えたが今は好機と思うしかない。

銃口を格子の付根に合わせた。

うまく行けば壊せる… 

トリガーを引く指に力を込めた 


ガアン

甲高い音が三度、獄中に木霊する。
近距離から撃ったため腕がびりびりと痺れる 

「…う」 

微量であるが傷がついた。だがこんなものでは残りの弾数がとても足りない。絶望的な状況にがくっと身体の力が抜けた。 

戦う事も逃げる事も出来ない、足手まといにしかならない自分の力の無さに嫌気がさす。 

「狂、みんな…」 

だからと言っておとなしくしていられる程情けない性格になどなった覚えも無い。

「このっ、開けろー!」 

苛立ち紛れにその場に在った木箱を思いっ切り格子に投げ付ける 

「なっ!」 

「えっ!」 

ふっと目の前を人影が横切った。
加速の付いた足はその侭勢いよく格子にぶつかる。 


がしゃぁぁん 

「「………」」 

シィンと再び辺りは静まり返った。
呆気にとられた顔で目の前の男を見つめた。 

「あな…たは…」 

困惑する頭で漸く口を開き相手の名を述べる。
銀色の髪を揺らしながら驚いた様に両目を見開く青年。 

「…伶、辰伶なの?!」 


「お前は…椎名ゆやか?」

お互いの名を呼び合い存在を確認しあう。 

「なっ何でこんな所にあなたが居るの!」 

「近くで聞き覚えの在る三蓮銃の音がしたからだ。もしやと思ったが…」 

ふうっと呆れた様な溜め息を吐きながら今のゆやの現状を見つめた。

「…下がって居ろ。」 

「え…?」 

唐突に言われ訳が解らなかったが、余りに確かなその言葉に言われた通り後ろへ下がった。
ゆやが後ろに下がるのと同時に、辰伶は手に持っていた太刀を思い切り斜めに振翳す。 

「え…」 


振翳された太刀は一瞬にして強固な檻を切り裂いた。

がらがらと音を立てて足下に散らばる破片。 

「あ…ありがとう。」 

驚きつつも自分を牢屋から解放してくれたことに心の底から感謝する。それは辰伶にも深く伝わった。

「水龍の借りを返しただけだ…早く行…」 

顔を上げ、その場を去ろうとした辰伶の眼が決して無視する事の出来ないものを捕らえた

「辰伶…?」 

急に黙り込む辰伶にゆやの顔が不安で曇った。




後編



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