Your gift for me



コンコン

「はいっ!」

元気よくドアを開けてゆやが顔を出す。

「寒い所ご苦労様です。中、入って下さい。」

「あ…ああ。」

言われるがまま中へと入る。


「丁度出来た所です、奥で座って待っててください。」

案内された部屋へと入り、そこのソファに腰をおろす。
目の前のテ−ブルには辰伶のために飾ったのであろう、花瓶に綺麗な花が生けてある。
床はフロ−リング。どの部屋も物はあまり置いていない為、一人暮らしには十分すぎる広さに感じた。


バクバクと高鳴る心音を静めているとゆやが盆に皿を載せて運んできた。

「えへへ、椎名ゆや特製パスタで−す。」

ふわっとトマトの香ばしい香りが漂う。
嬉しそうなゆやの表情にどきりとする。

「これは…?」

皿の横に置かれた小皿に目を見張る。

「姫竹の子…。」

「義兄弟のほたるさんに教えてもらいました。」

驚く辰伶ににっこりと笑顔で答える。

どきりとその眼が眩むほどの笑顔に見とれる。
繊細なゆやの心遣いに感嘆しつつ、今まで押さえていた感情が一気に湧きあがる。
その感情に刺激されて、気が付けば無意識に手を伸ばしていた。

「さ、食べま…。」

席に着こうと振り返った瞬間、ふわりと暖かな温もりがゆやを包み込む。


「し…んれいさん?」

唐突に抱きしめられびくりと肩を震わせる。

「あ、あの…。」


突然の事に訳の解らないゆやは腕の中で固まってしまう。

逃げられない様に強く…壊れない様に優しく、衝動に駆られるがまま辰伶はゆやを抱きしめた。


時が止まる程の静寂が辺りを包む。



「あ…。」

不意にゆやの身体が前に傾く。
辰伶が腕を解き放ったのだ…。


「しんれ…さ。」

距離を置いて離れる。
かたかたと震えながら黙って俯く。



「―っすまない…。」


「え?」

ぽつりと呟いた言葉に顔を上げる。

真剣な顔と悲しそうな声


「だが…此れが俺の気持ちだ。自分勝手だとわかっている。
だが…どうしても伝えたかった。」

そういい残すと踵を返し玄関へと歩む。



もう…学園で二度と会う事も話す事も出来ないな…。


自嘲した笑みを浮かべドアノブに手を掛ける。

…と


背中に柔らかな感触が伝わった。

「ゆ…や?」

驚いて目を見開く。

「あ…の…私。」

まだ微かに震えている身体で必死にしがみ付く。

「うそなんです。誕生日だからって食事に誘ったの。」

「え?」

声も小さく掠れている。

「本当は…此れ渡したくて。」

前に差し出されたピンク色の小さな箱。


「バレンタインデ-の…チョコです。
ゲタ箱で会った時渡そうと思ったんですけど受け取って貰えなかったらって思うと凄く恐くなって…。」

桃色の頬がみるみる真っ赤に染まっていく。まるで幼い子供の様な純粋な瞳の少女が溜まらなく愛しくて愛しくて…

「貰っても…いいのか?」

「はいっ。」


お互い顔を上げ視線が絡んだ。
その眼に映るのは心から大切なヒト…


「ご飯…たべませんか?」

にこりと自分だけに向けられた純粋な笑顔。綻ぶ口元を押さえる必要などもう無かった。


「ゆや…。」

そっと引き寄せ再び腕の中へと包み込む。
先刻とは違う辰伶の温もりにゆやも静かに身体を埋めた。



「折角の料理が冷めてしまうな…。」

「また温めれば平気です。」


″だからもう少しだけこのままで…。″

今まで擦れ違っていた時間を埋める様に二人は寄り添い続けた。


甘い甘い二人の関係はまだ始まったばかり…




                             END
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辰ゆや甘甘。
表に置いていた『My gift for you』の続きです。

こんなにラブラブな物書いたの初めてです…//まだほたゆやでも書いていないのに。さすが兄貴!
此れの何処が裏かと言うと、あまりに管理人の脳内が少女漫画になってしまった為、表に出すのが恥ずかしいんです。

ああ、もう今も蕁麻疹が止まらなくて…(死


2004・2/25





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