//遭//


「珍しいな…こんな所に人間の小娘がいるとは。」


狂達とはぐれてしまった直後にゆやが出会った人物
朱色の目隠しに短髪、長身…にやにやと不敵な笑みを浮かべこっちを見ている。

…どう見ても怪しい

ゆっくりと後退るが、背中に壁の冷たい感触が伝わる

「まぁそんなに怖がんな、別に殺すつもりはねえし、」

今はな…と付け加えて余裕の笑みを浮かべる。
今まで見て来た壬生の奴等とは何処か違う。

何故だか頬に冷や汗が伝わった。


「な…何者なの?!」

「あ?俺か、俺は遊庵。大四老の一人だ。」

さらりと名のられ、言われた言葉がしばし頭の中を駆け巡る


「ゆ…あん……?て、ぇっ、大四老っ!」

一気に顔が真っ青になる。まさかこんな所で壬生の幹部に遭うとは予想もして無かった…。
おまけに今此こにいるのは自分一人…周りに仲間と呼べる者は誰も居ない。

ゆやは人生最大の岐路に立たされた気がした。


「…にしても…」

まじまじとゆやを見ながらはぁっと溜め息を吐く。

…なんだか無性に感に触る。

「お前鬼の子の仲間だろ?全然強そうに見えねぇな。」

「なっ!」

図星を刺され思いっきり睨み付ける。遊庵はたいして気にする事も無くむしろ益々楽しそうに口元を歪めた。 
ゆやは半ばやけくそになり微かに震えている身体を震いだたせ、ビシッと遊庵に指を指す

「み、見た目で判断しないでくれるっ?私だって此でも賞金稼ぎの端くれなんだから!」

ぜえぜえと息を切らしながら尚も遊庵を睨み付けた。
そんなゆやを呆気にとられた顔で見つめる 

…しばしの沈黙



「…くっ」

それを破ったのは遊庵の堪える様な笑い声だった。
くっくっと喉を鳴らしながら額に手を置き笑い続ける

「くくく…そうか。少しは腕が立つみてぇだな…。だが中途半端な強さなんかじゃ大四老〈俺ら〉どころか…、

ざっ、とゆやに歩み寄る

「―っ来ないで!」

先刻とは比べ物にならない程の威圧感に底知れない恐怖が沸き上がる

この男から逃げなければ…。


思考よりも本能が先にそう言っていた

ゆやが懐から銃を取り出すより早く、遊庵がその腕をつかんだ

「…雑魚にも勝てねぇぜ?」

「っ…。」

―怖い

逃げ場の無い状況に頭の中は絶望と恐怖で一杯だった。
それでも決して怯まず、負けじと男を睨み続けた。

鳶色の瞳が真っ直ぐ遊庵を映し出す

「…泣きもしねぇか。」

かたかたと肩が小刻みに震えているのにその瞳からは一筋の曇りも見当たらない

殺せるものなら殺して見ろ…私は絶対生きてやる…―そう、言っている様にも感じた。

遊庵は顎を掴み、耳元で囁いた

「久々に喰いでのある魂だな…。おもしれぇ、お前の魂俺が貰った。」

ぐっと腕を引き寄せ口を塞ぐ

「っ…ん‥んぅ…」

そのまま壁に押し付け更に舌を絡める。
突然の事に一瞬頭が真っ白になったゆやだが歯列を割り、口内に侵入して来るそれにすぐに正気に戻る。

「ゃ‥ん、ふ…」

首を横に振り、胸を叩き、何とか逃れようと抵抗するが掴まれた顎も腕もびくともしない


嫌―

がりっと鈍い音がした。遊庵は掴んでいた顎を放し唇を開放すると自分の唇に付いた真っ赤な血をペロッと舐め上げる。
今だ腕は掴まれた侭…

「は‥ぁ。」

瞳からは涙が今にも零れそうだった
今迄感じた事の無い異性という恐怖感にゆやは立って居るのもやっとだった。

「言っただろう?お前の魂俺が貰ったって。それに…」

「つ―」

ぐらりと視界が歪み身体の力が抜けて行く。

(何此れ…頭がぼぉっとする…立ってられない)

「ゆあ…」

不気味に笑う男の名を呼ぶ事なく、ゆっくり瞳を閉じそのまま壁に倒れこんだ。
首には手刀の跡が赤い痣として残っている。

ゆやは薄れゆく意識の中で最後の言葉を思い出していた。


「それに…暫くは楽しめそうな玩具が出来たしな。」


気絶したゆやを抱え遊庵は満足気にほくそ笑んでいた。



fin

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ゆんゆや。鬼畜野郎万歳…。




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