My gift for you



どさどさどさっ


げた箱に響く物のぶつかる音。

周りに居た数人の生徒達は何があったのかと一斉に音のした方を振り返り、
ああ、なんだとその訳を理解する。


「な…何なんだ。」

靴箱を開けたまま固まる男。

じっと靴の中にまで詰められたチョコの山を凝視する。
つけておいた鍵は何故かなくなっており、よくよく見ると抉じ開けたような跡がある。

頭を抑えながら盛大な溜め息を吐いた。
そのままにする訳にもいかず、チョコの山をカバンに詰め込む。
手に持つ二つの紙袋には、既に朝、昼、と波の様に押し寄せてきた女子達から
無理矢理渡されたプレゼントでいっぱいだ。

「一体どうしろと言うのだ…。」

本日二度目の溜息。


「辰伶さん？」

どう処分したらいいかと考え込む辰伶を見て不思議に思ったのか、ゆやが声をかけた。

「どうかしたんですか？」

「椎名…ゆやか。此れをどうしたらいいかと思ってな…。」

「あ、そうか、今日バレンタインですね。」

軽い気持ちで靴箱を覗きこむ。

「…。」


絶句


まだ詰め込み終えていないチョコが半分。奥にひしめき合っている。
中には重圧に耐え切れず、へこんでしまっている物まであった。

「此れ…全部ですか？」

「まだある。」

二つの紙袋を差し出され、さらに口が聞けなくなるゆや。

「甘い物は苦手なんだが…。」

気ダルそうに残りをカバンに詰めた。

「にしても凄い量ですね…。」

マジマジとその様子を見学するゆや。
紙袋、そしてカバンを眺め、あらためてその凄さを実感する。

「バレンタインと誕生日が重なっているからな…。その所為だろ。」

何気なく呟いた言葉にゆやは目を丸くする。

「辰伶さん、今日誕生日だったんですか！？」

「あ…ああ。」

「どうしよう！何も準備してない！」

「いや、別に構わんが。」

オロオロとうろたえるゆやを笑いながら宥める。

「何言ってるんですか！折角の誕生日ですよ。
そうだ、せめて何かご馳走します。」

「え？」

「私、一人暮らしなんでごはんぐらいなら作れますよ。」

（椎名ゆやのて、手料理…。）

ぼんっと浮かんだ考えに、赤面してやいないかと顔を抑える。

「い…良いのか？」

「はい、ぜひ！」

何の躊躇もなくすっぱりと承諾するゆやに、うっすらと在った期待も崩れた。

…義理でも欲しかったが…。


「じゃぁ、辰伶さん、あとで。」

「ああ…。」

鼻歌混じりに歩くゆやの後ろ姿を複雑な気持ちで見送る辰伶。

何を作ろうかと胸を躍らせる少女に、男の胸の内はわからない。


「…逆バレンタインと言うのもありか？」


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ＥＮＤ
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

辰伶誕生日祭第二弾。

微妙な片思いの辰伶と鈍感なゆやたんです。辰伶もてまくり。
実はこの先がメインだったんですけど、あまりに長くなるので省きました。

続きは裏に置こうかと思っています。
2/14までに書きあがらなそうだけど・・。