カラカラ

カラカラ

 一番のライバル



「…何それ。」

薄い桜色に黄色い丸模様のそれは、少女の手の中でカラカラと音をたてて回っている。

「あ、ほたるさん。…なにって風車ですよ?」

「いや、それは知ってるけどさ…。」

ほたるが聞きたかったのは何故此処に風車が有るのかという事だった。


「…今日お祭りなんてあったっけ。」

「買い物していたらお店の人がくれたんです。」

にっこりと微笑んで、またカラカラと廻り続けるそれを眺める。


「…。」

懐かしそうに…けれど何処か寂しそうな顔をしているゆやに、ほたるは疑問を持った。


「…誰を見てるの?」

「え!?」


心の中で聞いたつもりが思わず言葉にだしていた。

「なんかゆや、ずっと遠いトコばっか見てるみたい。」

「そう…見えましたか?」

「うん。」

ほたるが頷くとゆやは恥ずかしそうに苦笑いをする。


「昔の…兄様が生きていた頃、一度だけ風車を買ってもらった事があるんです…。風車を見てたらなんだか懐かしくなっちゃって。」

「…。」

いつもと違うゆやの笑顔にほたるは言葉を失った。


『…きれい。』


いつもの少女らしい可愛い笑顔ではなく、どこか哀愁を帯びた大人のような笑味を浮かべている。


「…ほたるさん?」

はっと我に帰ると不思議そうに首を傾けているゆやがいる。その表情はいつもと変わらず少女らしい笑顔だった。

「…ゆやってさ…。」

「はい?」

「兄の話するときいつもそういう顔するの?」

「??」

言葉の意図がわからないゆやは?のついた顔でますます首を傾げている。


まぁいいケドさ…。今のゆやだって可愛くて好きだし。

「でも俺以外の男の前であんな顔しないでね。」

「へ?」

ちょんっと軽くゆやのおでこに口付けをすると、素知らぬ顔で部屋から出て行った。

「約束だよ。」

念を入れることも忘れずに。


「ほ…ほたるさん//!!」

一瞬の出来事に暫く放心していたゆやだがようやく我に返り、ほたるに口付けられた箇所を真っ赤になって抑える。

「え、え、あんな顔って…、私そんな変な顔で話してた!?」

ほたるの言葉の意味も、口付けの訳も鈍感なゆやにはわからなかった。



「…まいったな。」

すたすたと廊下を歩く天然男は珍しく悩んでいた。

「狂でもアキラでも、灯ちゃんでも馬鹿兄貴でもなくて…。」

悶々と先刻のゆやの笑顔を思い出す。


「一番のライバルってゆやの兄なんだ…。」




                _fin_


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久々のほたゆや。
マガジンの望兄登場に触発されて書きました。
       
              _2003・11/9_   
















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