自由奔放な飼い犬
麗らかな秋晴れの陽気ゆやは鼻歌を歌いながらご機嫌で縁側に座っている。
「言い天気ー。これなら洗濯物もばっちり乾くわね。」
すでに干し終わり空になったカゴを傍らに大きく伸びをする。
「さて、と。部屋の掃除でもしよっかな。」
カゴを掴むとよいしょと立ち上がった
なー
小さな鳴き声に目線を向けた。その先には可愛らしいオレンジ色の猫がゴロゴロと喉を鳴らして寝ころんでいる。
「可愛いぃー!」
おいでおいでと手招きをすると、とたとたとすり寄って来た。
「ふふ…。ふわふわしてる。」
その猫は野良とは思えないほど警戒心もなくゆやに甘えてきた。
…と
にゃぁ!
突然ばたばたと暴れ出し、茂みの中へ逃げて行ってしまった
「あー…。逃げちゃった…。」
「…何やってんの」
「!」
突然の背後からの声におもわず肩が跳ね上がる。
「ねぇ…?」
この声は…
「ほ…たるさん?」
振り返るとすぐ目の前でゆやと同じ目線にしゃがみ込んだほたるが居る。
心無しか僅かな殺気も混じってるような気もしたがゆやは全く気が付いていない。
「猫が居たんでなでていたんです。ふわふわしてて可愛かったですよ。」
うれしそうな笑顔が日の光でキラキラと輝く
「ふぅん…。ゆや猫好きなの?」
「はい。大好きです!」
「……ん。わかった。」
「へ?」
「俺今日から猫ね。」
「…はい?」
ほたるの言葉の意図が掴めないでいるゆやは訳がわからず首を傾げる
「え…えーとそれは…。」
どういう意味ですかと聞く前にほたるが口を開いた
「よろしく御主人様。」
ぺろっと頬を嘗められる
「ふぇっっ!ほたるさん!!」
真っ赤になって後ろへ後ずさる。対しほたるは平然とその場に座っている
「な、な、な…。」
「俺ゆやの猫(ペット)になったから。」
そう言い残してスタスタと行ってしまった。
嘗められた事には驚いたが相手はあのほただ。まぁいっかと軽く息を吐くと特に気にする事も無く自分の仕事に取りかかった。
どうせいつもの気まぐれだろう…と
――甘かった
「「「・・・」」」
「あの、ほたるさん…。」
「何?」
「…私に何か用ですか?」
「別に。」
食事が終わりみんながくつろいでいる刻。なぜかほたるがゆやの膝の上に頭をのっけて横になっている。
周りからは無数の殺気が立ちこめる…
「ペットなら主人に甘えて良いでしょ?」
「え?」
その言葉に昼間の事を思い出した
(ほ、本気だったんですか!!)
「駄目?」
「駄目って言うか…そ、そんなほたるさんの事猫としてなんて見れませんよ。」
顔を真っ赤にしながら必死で説得する。
「…ふーん。わかった。」
「え!ホントですか。」
ほたるにしてはアッサリと退いた事にホッと胸をなで下ろしたのもつかの間。なかなか膝の上からどいてくれないほたるに疑問を待った。
「ほたるさん…?」
「猫がダメなら犬にする。」
――ぷち
周りの男達が遂にキレた。
一勢にほたるに技を仕掛けようとした時…
「…わかりました…。」
諦めたようなゆやの声。
周りの気温がマイナスの勢いで下がる
「あらあら…良いんですの?ゆやさん。」
事の有り様にクスクスと笑っているのはお国だ
「…ほたるさん相手じゃかないませんら…。」
犬を駄目だと言っても、恐らく次は兎と言うだろうと…明らかな苦笑を浮かべて膝の上から仰ぎ見ているほたるを見る
「じゃあこのままで良い…。」
「う゛…はい…。」
本人にそう言われてしまえば周りの男達は手が出せない
「ふふ…ゆやさんも苦労しますわね…。」
自由奔放な忠犬を手に入れたゆやの心労は、しばらくの間続きそうだ…
「…寝るのも一緒だよね?」
「え!?」
_fin_
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ほたゆやペット話でした…。
ほんとはその先も考えていたんですけど、あまりに長くなるのと、管理人のヤバめの妄想が入りそうだったのでやめました…(懸命な判断だ
アキゆやを書いてみたいんですが、アキラは心の内が難しいです。
2003・10/11