狩り
すべての動きを奪って、その動作を見逃すことなく。
「離しなさいよ!」
その漢が行動に出たのは連れ戻されてから、一番最初の夕餉のときだった。
結局逃げ出すことは叶わず(置き場所に困ったからだとは思えないが)再びこの漢の元へ戻された。
押さえつけられた手首に鈍い痛み。
「痛いんだってば!」
喚く。
底の知れない漢の行動。
「黙ってられねえのか、嬢ちゃん」
「だから名前知ってるんだから、名前で呼びなさいって!」
ガッ
不意をつかれたのか、ゆやの頭突きがまともに入った。
顔を近づけていただけにかなり痛い。
「………いつまで強気でいられるのか、楽しみだな?ゆや」
事実、動けないことには変わりない。
むしろ今の行動で掴まれた腕は先程よりも強く拘束されている。
ゆやの首に遊庵の息が掛かろうとした瞬間。
ゴッ
「………時人」
「そんなところにいるなんて思ってなかったよ」
頭に降ってきたのは、よくわからない書類の山。
はっきり言って量が半端じゃなかった。
「アンタが溜めた書類ね」
それと、と言葉を区切ったのは意図的なのだろう。
遊庵の首筋に一枚のカードが押し当てられた。
「はやくどいてくれない?」
「テメエには関係ないだろうが」
ゆやは突然現れた見覚えのある少年に混乱していた。
というよりも現在の状況に。
「人が口説いてるときに邪魔するんじゃねぇ」
「口説く?襲うの間違いじゃないの」
その言葉に反応したのも、組み敷かれたままの少女だった。
「…あの口説くって」
人が見ればマヌケとしか言えないだろう。
なにせ、一目で襲われているとしか思えないのにセリフ。
「………なんだと思ってたんだ?」
押し倒されて、自由を奪われてのこの状況を。
「逃げ出したから、その嫌がらせ」
「「……………………」」
絶句するしかない二人をキョトンとした目で見上げ、目を瞬く。
もはや呆れて拘束していた腕を解放し、遊庵はその上から身体を起こした。
「勝負はこれから、ってか?」
「負ける気は全然ないけどね」
「?」
じろりと一見無害な少年を睨み、にやりと浮かべられた酷薄な笑み。
睨み返されたことに嘲笑を浮かべた。
そして仕方無しにばらまかれた書類を集めると軽く手を降りながら部屋から出ていく。
「テメエもさっさと出ていけよ」
クギを刺すことも忘れなかった。
片づけた書類を持って廊下を歩けば、吹雪に付き従う漢が壁に寄りかかって立っていた。
「遊庵」
「あ?」
静かな声で呼びかけられても、歩みを止める気はなく進む。
「あの少女。吹雪も気に入っていますよ」
「はぁ?!」
いつも無関心な太四老の長までがという驚愕に思わず振り返れば、すでに姿はない。
「ちっ、言い逃げか」
薄暗い廊下を睨んで歩みを再開した。
アレはオレの獲物だ。
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やなぎさまよりの21212HITリク『遊庵ゆや+太四老』でした。
太四老の誰かとのことでしたが、一人では収まりがつかず総出演っぽくなりました。
…遊庵ゆや?争奪戦?
かなり展開がえらいことになってしまって(滝汗)
ここに至る経緯は…まあ知ってる人だけほくそえんでくださればと思います。
やなぎさまへの捧げ物とさせていただきます。
ありがとうございましたv
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管理人のコメント
きゃ--------------!!!!!!(第一声)
いいんですか?キリ番とはいえこ、こんな素敵過ぎるSS頂いて!!
ヒイ感謝してもし切れません!有難うございます